声質改善への道②~声楽家がPOPSを歌えるまで

こんにちは、アンヴォ―カル・ピアノスクール代表の浅井のぞみです。

前回のブログでは、「声質を改善していくためのプロセス」についてお話させていただきました。

「元々持っている声の太さ」「自分の声の出し方の癖」を知ることがとても大切で、「自分の癖を考慮しながら、なりたい声になるために必要なトレーニング」を、考えていくことが大切ですよ、というお話をさせていただきました。

☞ブログ「声質を改善していくための道① ~声が変わるためには?」はこちら

今回からはもっと具体的に、それぞれの声のタイプに合わせたトレーニングの方法やプロセスなどをお話ししていきたいと思います。


今回のテーマは、「声楽や合唱をやってきた方が、POPSをかっよく歌えるようになるためにはどうしたらいいか」という内容です。

このテーマは、声楽を20年やってきた私が、汗水たらして試行錯誤を繰り返しながら、やっとPOPSが歌えるようになった!という方法がたくさん詰まっております。

声楽や合唱をやっていても、POPSが上手く歌えない…というみなさんが、今までよりももっとPOPSを楽しんで歌えるようになっていただけたら嬉しいです。

クラシックvsPOPS

声楽や合唱をやってきたみなさんは、「POPSなんて喉に悪いから歌わないほうがいい」と、言われた経験はないでしょうか?
私は学生時代についていた声楽の先生から、よくそう言われていました。

本当は、どっちがいい悪いというわけではなく、「どっちの声が好きか」ということだと思います。

「クラシックの声の響きこそ美しい音楽」というのはその人の価値観であり、「クラシックの声が嫌い」という人もいます。
何百年も前はクラシックしかなかっただけで、今は沢山の音楽があってそれに合わせた声の出し方があるだけです。

ですから、どんなジャンルでも喉の使い方を誤れば喉が苦しく感じたり、声をからしたりすることは同じです。

では、一体何が違うのかというと、
「POPSとクラシックは、求められている音色が違うから、その声を出すための身体の使い方が違う」

ということです。

私も声楽では真ん中より下のドでも、全て裏声で歌っていたので、本気でPOPSの発声を学び始めてから、地声が安定して出るようになるのに4年ほどかかりました。

逆にPOPSしか歌ったことがない方は、低音を裏声で出すことが全くできない人が多いと思いますが、中には、男女限らず、高音を裏声で出すことができない人も意外といらっしゃいます。

どのジャンルでも歌えるようになる声になるようためには、そういった発声の偏りをなくし、どちらも出せるように喉の筋肉を鍛えることが必要なのです。

また、男性の声楽家と女性の声楽家でも喉の使い方で違う点がありますので、男女別に分けて考えていきたいと思います。

クラシックとJ-POPの発声の違いとは?

あくまでも私の見解ですが、比較表を作ってみました。
自分が一つ一つの項目で、どちらに近いかを考えてみてください。
(POPSでも、洋楽では少し違う点があるので、あえてJ-POPと書きました。)

[su_box title=”クラシック  ” style=”glass” box_color=”#cb6c9e” radius=”7″]
声帯の厚み・・・       厚く使う
声帯の閉鎖・・・       女性は弱く、倍音は少ない
                                              男性は全体閉鎖が強い、倍音は多い

軟口蓋・・・         開く
舌骨・喉仏の位置・・・    低め
呼気量(息を吐く量)・・   多い
強く使われる喉の筋肉・・・輪状咽頭筋、(男性は胸骨甲状筋も)
音色・・・           深い、太い響き、柔らかい、キンキンしない[/su_box]

[su_box title=”J-POP  ” style=”glass” box_color=”#cb6c9e” radius=”7″]
声帯の厚み・・・       薄く使う
声帯の閉鎖・・・       前側での閉鎖が強い、倍音が多い
軟口蓋・・・         開く
舌骨・喉仏の位置・・・    高め
呼気量(息を吐く量)・・   少ない
強く使われる喉の筋肉・・・甲状舌骨筋
音色・・・          細い、軽い響き、鋭い、キンキンする場合もある[/su_box]

赤字で示しているところが、最も大きな違いです。
POPSでは、声帯の前側をしっかり閉じます。
それに、息を吐く量は少ないです。

この二つをまずマスターすることが、声楽をやってきた私たちにとっては難関です!

特に女性は、倍音が少ない声が美しいと言われていますので、普段閉鎖を入れないように声を出しているため難しいです。

「息をほとんど吐かない」くらいで練習していかないと、声帯を閉じることはできません。
でも、この声帯の閉鎖こそが、高音でも地声感のある声を出すために必要です。

特に男性の場合、声楽の太い声だと声帯を厚く使うので、A(ラ)を出すのが限界という方でも、POPSの細い響きの声(ミックスボイス)だと、声帯を薄く伸ばしながら出すことができるので、音域をもっと広げることができます。

うちの男性の生徒さんで、バスバリトンの声質の人も、Hi-Cまで出すことができます。

POPSが歌えるようになるために、必要な練習方法とは?

POPSを歌えるようになるために、一番大切なことは「声帯の前の部分」をしっかり閉鎖して声を出せるようにすることです。

これは、声帯を薄くしなければ、繊細な前だけの閉鎖はできません。
太く厚く声帯を使うことに慣れている皆さんにとっては、最初はなかなか難しいと思います。
私もかなり時間がかかりました。

声帯閉鎖は何のために必要かというと、マイクに乗りやすい声にすること、リズムに乗りやすく歌えるようにするためです。

倍音が入ると、ちょっとキンキンしたような金属的な音が入り、高音でも裏声っぽくない、ミックスボイスという地声感のある声出せるようになります。

声帯閉鎖(=倍音)は、ボーカルフライやエッジボイスと呼ばれる、ビリビリとした雑音みたいな声を鳴らす練習で出すことができるようになります。

声帯の閉鎖が上手になると、「がなり」や「ハスキー」のような、ザラザラとした感じの声も出せます。

声楽の太くて柔らかい美しい響きの声とは、ちょっと対照的ですね。
また、声楽は、舌骨や喉仏を下げることで声の響きを太くさせ、マイクなしで遠くに響かせる声を出しています。

息の吐く量を多くすることで、声帯の閉鎖しすぎを防ぎ、響きで声量を大きくしているのですね。

声楽をやってきたみなさんにとっては、最初は、「息を吐かないように声を出すこと」や、「声帯閉鎖の練習をすること」に抵抗感がある方も多いかと思います。

声帯閉鎖をすると、「うわ、喉使ってる!喉に悪そう」と思ってしまうからです。

でも、声帯に意識を持って閉鎖される練習自体は、決して身体に悪いわけではなく、やり方の問題なので心配なさらずやってみましょう。

今までのような声の出し方のまま、声帯を厚く、太い響きのままで声帯を閉鎖するのはかなり難しいので、最初は小さめの細い声で、力まないようにしながらやってみてください。

私のレッスンでは、「カワイイ声出して」と言うと、みなさん上手くできるようです。

 

声楽の声の出し方と洋楽との違い

ついでに、洋楽のことも表にして、説明してみたいと思います。

[su_box title=”洋楽  ” style=”glass” box_color=”#cb6c9e” radius=”7″]
声帯の厚み・・・       薄め
声帯の閉鎖・・・       強い(前側)→倍音が多い
軟口蓋・・・         開く
舌骨・喉仏の位置・・・    舌骨下げる、喉仏真ん中
呼気量(息を吐く量)・・   少ない
強く使われる喉の筋肉・・・甲状舌骨筋、輪状咽頭筋、茎突舌骨筋など
音色・・・          太い、軽い響き、鋭い[/su_box]

洋楽も色んな声のタイプの人がいて、J-POPのに近い声の出し方の人もいますが、Beyoncéなどの黒人系パワフルなタイプの洋楽の歌手は、クラシックの発声のように舌骨が下がっていて、響きが太めなのにも関わらず、声帯の閉鎖がしっかりしています。

そうです、これはめちゃくちゃ難しいってことです(笑)

日本人がこれを真似しようとした時に声が太くならないのは、舌骨が上がったまま地声を強く出そうとするからです。

舌骨を下げると、喉が開いて太く響きが豊かになります。
太い声は「舌骨下げ」なしではできませんので、声楽をやってきた方はこれはやりやすいかと思います。

ただ、舌骨を下げたときに舌も一緒に下がってしまいやすく、それによって喉仏が下がった重い声になります。

「舌骨は下げて、舌上げる」という、それぞれ分離した動きを練習していただければ、洋楽も太いままでできるようになってきます。

また、声楽をやっている方は、輪状咽頭筋という、「喉仏を後ろの下方向に引っ張る筋肉」が強いです。
そう、後ろに喉を開いた感じがする、あの感覚です!

太い丸い声を作るのにはいいのですが、そこを強く使いすぎると声がこもり、声帯の閉鎖がしずらくなります。
特に女性は、ここを使いすぎると、裏声っぽさが抜けず、地声感のある声にはなかなかならないので、後ろの下に引っ張らないように気をつけてください。

沢山書いたので、混乱してきた方もいるかと思いますが大丈夫です!

まずは、J-POPの「細い軽めの声の練習」を身につけましょう。
いきなり黒人系のパワフルな声を練習するより、その方が絶対早道です。

「POPSにチャレンジしよう」と思うみなさんへ

喉の筋肉を一つに偏って鍛えるのではなく、まんべんなくトレーニングすることは、自分の声の表現の幅も広がりますし、楽しめる音楽の世界も広がります。

クラシック以外のジャンルの素晴らしい音楽に触れ、自分の声で表現していくことは、あなたの音楽性も豊かにしてくれますよ!!

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ボイストレーナー 浅井 のぞみ

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